大阪地方裁判所 昭和30年(ワ)4942号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔事実〕原告甲が被告乙に対して所有権に基き土地明渡を求めたところが、被告乙は原告甲の土地所有権は争わないが自分に占有権限(転借権)があるとの抗弁を提出した。しかし原告甲は、被告乙の主張する転借権の基礎になつている賃貸借契約は、原告甲(賃貸人)と訴外丙(転借人)との間で期間満了によつて消滅して丙に土地明渡義務のあることが確定判決によつて解決済であり、しかもその訴訟の係属中に原告甲から本件被告乙に対して訴訟告知の手続がなされている(被告乙の参加しないまま訴訟は終結している)から、右確定判決の効力は被告知者である本件被告乙に対しても及んでいるものであり、従つてもはや被告乙は右判決に抵触して賃貸借契約に基き転借権を有することを主張することができないと述べて、被告乙の占有権限を否定した。
〔判旨〕原告勝訴。
判決は、原告甲の主張どおり、原告甲と訴外丙との間で賃貸借契約が終了し賃借人丙に土地明渡義務のある旨確定判決によつて解決されており、また右訴訟の係属中に原告甲から本件被告乙に訴訟告知の手続がされたが被告乙の参加しないまま右訴訟は終結に至つていることを認定した上で、まず右訴訟告知がその要件を充たしているかどうかを判断し、次に訴訟告知の効果について次のとおり判断を示している。
「右訴訟告知はその方式にかしがあつたことの主張立証がないから、適式になされたものと認むべきであり、又右訴訟告知は賃貸借契約終了を原因とする賃貸人対賃借人間の土地明渡請求事件の当事者である原告からその訴訟の係属中当該訴訟の結果について利害関係をもち右訴訟に補助参加(民事訴訟法第六四条)することのできる転借人たる本件被告に対してなされたものであるから、訴訟告知の要件を充たしているというべきである。
以下右訴訟告知の効果として、被告に対して右確定判決の効力が及ぶかどうかを考察する。
民事訴訟法第七八条、第七〇条の規定によつて、訴訟告知の効果として一定の場合を除くのほか被告知人に対しても裁判の効力が及ぶのであるが、右裁判の効力の性質について既判力説と参加的効力説とが対立し、前説は、同法第七〇条をもつて既判力の主観的範囲を拡張したものと解し、判決の既判力が原告、被告のほか、参加人が訴訟に関与した責任上、参加人にも及ぶというのであり、後説は、本条は、参加人が参加により訴訟進行を共同にした以上、被参加人が敗訴したときは、参加人と被参加人との間で分担し合うという衝平の見地に由来するもので、既判力以外の特別の効力であると解するのである。
そして本件においては、原告は右確定判決で勝訴になつており又原告(告知人)は被参加人でないのだから、右両説のいづれを採るかによつて全く結論を異にするものである。
思うに、民事訴訟法第七〇条は旧法第五五条が「従参加人ハ……其補助シタル原告若クハ被告トノ関係ニ於テハ其訴訟ノ確定裁判ヲ不当ナリト主張スルコトヲ得ス」と規定したのを改め「……場合ヲ除クノ外裁判ハ参加人ニ対シテモ其ノ効力ヲ有ス」と規定するにとどまるから、旧法におけるように参加人と被参加人との間に特殊の効力を定めたものではなく、右裁判の効力とは既判力をいうにほかならないから。右第七〇条は同条所定の場合を除いて参加人に対しても既判力の及ぶべきことを規定したものと解するのが相当である(大審院昭和一四年(オ)第一二〇五号同一五年七月二六日第二民事部判決参照)。規定の文理上そうであるのみでなく、実質的にみても、そう解すべき合理的な根拠があるものと考える。すなわち参加的効力説が、民事訴訟法第七〇条の立法趣旨を参加に伴う敗訴の危険を参加人と被参加人との間で分担させようという衡平思想においているのはその限りにおいて合理性を持つているようであるが、既判力説において被告知人が当該訴訟において攻撃防禦の方法の提出その他一切の訴訟行為をなし(民事訴訟法第六九条第一項)正当な判決を得る「訴訟上の地位」にあることから考えて右被告人に対してその参加しうる訴訟の判決を及ぼすのはその地位に伴う当然の結果であると立論しているのは、より一層の合理性があるといわねばならない。そして被告知人においてかような「訴訟上の地位」にも拘らずその責に帰すべからざる法律上又は事実上の事由により必要なる訴訟資料の提出をすることができず又は補助する主たる当事者が故意又は重大な過失により必要なる訴訟資料を提出しなかつたため、本来あるべき裁判と異なる不利益な裁判がなされ被告知人にその裁判の効力を強いるのが極めて酷なる場合があるところから、裁判の拘束力に対する除外例を民事訴訟法第七〇条で定めているのだと考えることができる。故に右のように判決の効力の及ぶ主観的範囲を拡げても被告知人に酷なるものでも又相手方を偶然利せしめるものでもないであろう。そしてかようにして既判力の主観的範囲を参加人にまで拡張することによつて、被告知人(参加人)に対し別訴によらせるよりも裁判の劃一性を期しかつ紛争の一掃をはかることができ、訴訟経済にも沿うと考えられる。なお判決の効力の及ぶ客観的範囲について考えるに、参加は「裁判の結果」について法律上の利害関係を有するものに限りこれを許すのであるから当該訴訟の当事者間において生ずる既判力の範囲についてこれを認めれば足り、被参加人に対し裁判をなすについての前提問題に拡げて事実の確定を認める必要ないし理由はないのであつて、この点からいつても既判力説に一層の合理性があるように思われる。
以上のような次第で民事訴訟法第七〇条の裁判の効力については既判力説の解釈を正しいものと考えるから、右告知の行われた訴訟の判決主文の判断の拘束力は法の認める除外例の場合以外は被告知人たる本件被告にも及ぶことを認めるほかないところ、本訴において右被告知人たる被告から右裁判の効力を特に制限すべき民事訴訟法第七〇条所定の事実の存在については何らの主張もない。
そうだとすると本訴において、被告は右確定判決に抵触して原告に対し原告と賃借人との間の賃貸借契約がなお存続すると主張することはできないというべく、従つて右賃貸借契約を基礎とする被告と転貸人(賃借人)との間の転貸借契約がなお存続すると主張するのも由ないものと断ぜざるを得ない。」